1990年代半ばにはCR機というパチンコ台が活躍していましたが、中でも「CR黄門ちゃま2」という台は攻略プロにとって思い入れのある台だと思います。
といいますのも、同時期に出回ってたアレンジマンほどは(攻略手順が)難しくなく、エスケープよりは利益率が良かったというバランスのとれた台で、稼ぐのに適していたからです。
かく言うボクも御多分に漏れず、かなりお世話になりました。
それだけにいろいろな想い出があるんですが、今回はその中から1つ。
ゴト師とネタプロの境目
御存知のように「CR黄門ちゃま2」は一周期が4.8秒と長く、当りの乱数がほぼ一カ所に位置している不思議な機種でした(笑)
まるで「キカイ(体感器)で狙ってくれ」と言わんばかりの仕様でしたから、日本全国のネタプロが群がって抜いていたんですね。
当然ボクもアレンジマンと交互にローテーションを組んで抜いてたんですが、ある日、店でゴト師と遭遇したことがありました。
ゴト師とのバッティング自体はよくあることなんですが、その時は同じ黄門ちゃまのコーナーで(間に1つ台を空けて)並んで打つという状態になったんです。
これまた別段、珍しいことではありません。
ネタプロもゴト師も、仕事柄なるべく島の中央に座りますから。(※島の端台だと店員や客の目に付きやすい)
ただ、その時にはちょっと事情が違ったんですね。
その彼(ゴト師)も体感器を着けてたんです。
口を利いたわけではありませんけど、キカイを装着している人間からすると、相手の動作から否が応でも(体感器を着けていることが)分かります。
簡単に言うと、彼のやってたゴトは以下の様なものでした。(当時の黄門ちゃまのゴトでは有名な方法)
※ちなみに、ゴトの語源は「イカサマの仕事師→シゴト→ゴト」らしいです。
この「当りのタイミングを計って」という部分に体感器が必要なわけです。
最初は気がつかなかったが・・・
実は彼が体感器を着けている事には、最初は気がつかなかったんですよ。
彼の手の動作が不自然だったので、ゴトをやってるんだなあぐらいの事は分かったんですが、おそらくそれはミニチャッカーを使っての玉減らし防止レベルだろうと思ってたんです。
ところが、彼の台が存外に調子よく当たるので不審に思って観察していたら・・・
彼のミニチャッカーの開閉がボクのキカイと同調しているじゃないですか!(※当りのビートでミニチャッカーを開閉させていた/その店は電源が一斉立ち上げなので同じ島であれば周期も同調している)
つまり、彼も体感器を着けているということです。
1つ席を置いて並んで座っている2人が、共に体感器を着けて打っているわけです。
ただ、1人は針金を使ってのゴト(犯罪)で1人は止め打ち攻略(当時は合法)なんですが。
コレ、どういう意味か分かりますか?
もしも店側が知ることになれば、この2人は仲間だと思うのではないでしょうか?
ボクは針金なんて持ってませんでしたが、体感器を着けている以上、同類とみなされてもおかしくないと思うんです。
彼がバレたら・・・冷や汗
もし彼がバレたら・・・そう考えたら全身から嫌な汗が出てきたのを覚えています。
彼がバレて事務所に連行された際に「横のアイツだってやってるぜ」などと店側にしゃべったら・・・。
ボクは針金こそ持っていませんでしたが、店側からしたらそんな小道具よりも体感器を装着していることの方が重要なわけで。
焦りましたねー。
彼が同業者(攻略プロ)であれば、そういう心配はあまりないんですよ。
体感器攻略自体は当時は合法でしたから、せいぜい出玉没収と出禁ぐらいで済みますし、そもそも同業者同士では余程の事情がなければ相手を売るなんてことはありません。
でも、彼はゴト師です。
ハッキリ言えば犯罪者なんですよ。
やはり、どこか感覚が違うんです。
どうせ自分が捕まるのなら、アイツ(ボクの事です)も巻き込んでやれ!
そう考えても全然不思議じゃありませんから。
その時、ボクは確変中だった
落ち着いて考えれば、彼だってプロのゴト師なわけでしょうから、そうそうヘタは打たないなずなんですが、その時のボクは「同じコーナーの1つ置いた席で、2人ともキカイを着けている」ということで頭がいっぱいだったんです。
まあ滅多にバレないでしょうが、こういう状況では万が一を考えて逃げるが勝ちです。
が、その時ボクの台は確変中だったんで逃げようにも逃げられなかったんですよ。(確変中に止めるなんて怪しすぎるので、却って嫌疑を誘う可能性があるから怖くてできなかった)
とりあえず席を立って目立たない様に店を出、駐車場まで行き、車中でキカイを外してタオルでグルグル巻きにしてトランクの奥に隠す様に詰め込みました。
まるで麻薬を隠す売人の気分ですよ(笑)
でも、もし彼がバレてボクの妄想のようになったら、ゴト行為は犯罪なので当然警察が来るわけで、そしたらボクの車も隅々まで調べられるから(隠しても)無駄な行為ではあったんですが。
店に戻って・・・
店に戻った後は、いくぶん楽な気分(とりあえずキカイを外したから)で残りの確変の権利を消化しましたね。
ゴト師の彼は相変わらずパカパカやってて、そうこうする内に確変を引いていたようです。
全く図々しいというか図太いというか・・・でもゴトで食べて行こうと思ったら、あれぐらい太い神経でないとやっていけないのかも知れませんね。ボクには無理ですが。
ボクは確変が終った後、(即止めは気持ちが悪いので)少し打ち込んでから玉を流しました。
気持ち的には1秒でも早くその場を立ち去りたかったんですが、そこはそれ、動揺を態度には出さず自然な感じで退店→景品交換と相成りました。
帰り際に彼の方をチラ見したら、ホンの少しコチラの方に視線を向けた気がしたんですが、もしかしたら彼なりのサヨナラの挨拶だったのかも知れません。気のせいだったのかも知れませんが。
帰りの車中で安堵すると同時に罪悪感
「もしかしたら、そんなに悪い奴じゃなかったのかも知れないな」
帰りの車中で、そんなことを考えながら店を後にしたのを覚えています。
と同時に、妙な罪悪感のようなものが湧いてきました。
別に彼を店に売ったわけでもないのですが、巻き添えを食うのが嫌で、そそくさと店から逃げた自分がサモシイ人間のように思われたんですね。
考えてみれば攻略プロもゴト師も店からしたら来て欲しくない害虫みたいな存在なわけで、ある意味「同じ穴のムジナ」なんです。
それを「自分は体感器しか使ってないから合法で、彼のやってるのはゴトだから犯罪なんだ」などとイイ子ちゃんぶった自分が嫌だったんです。(※1990年代は体感器攻略は合法だった)
そんな、何ともいえない気持ちで車を運転して帰りましたね。
いつもは流行歌をダビングした自作のテープ(当時はテープが主流だった)を流しながらドライブ気分で運転していたのに、その時は何も流さずにいたのは、よほど気にしてたんでしょう。
「自分が居なくなった後に、バレたりしてなければいいけどな」
そんな事を頭で考えていたのを覚えています。
今でも「CR黄門ちゃま2」をネットなどで見かけると、当時の彼を思い出してしまいます。
今はどこでどうしてるのかなあ・・・。
うまく一財産作って足を洗えてるといいんだけど。
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