ブルセラ屋のシゲさん その2

前回のつづきから~

シゲさんが儲けてたQ2ってのは、今みたく出会い系商売の整ってなかった当時からしたら画期的なモノだった。

なんせ、それまではテレクラ屋の店舗に行かなきゃいけなかったのが、このQ2回線の出現によって自宅に居ながらにして遊べるんだから、こんな気軽な事は無い。

その気軽さからかサルみたいな使い方をするバカ野郎も出てきたりして社会問題(※1)にもなったのを覚えてるよ。

(※1)Q2回線の使用には1分間で100円(業者にもよるが、大体こんなものだった)とかいうバカ高い料金が掛かるんだが、色ボケた奴は歯止めが利かなくて月にン十万とかになって未払いが増えた。その結果、直接ではないにしろQ2料金の一部をカスって利益を上げていたNTTが非難されるに至った。

おっと、話が逸れちゃったな。シゲさんの話だったね。

そのシゲさん、ブルセラ屋に目を付けただけでも相当な目利きだと思うんだが、まさかQ2にも手を出してたなんてビックリよ。

シゲさんの店の奥には座敷の部屋があってさ、そこで俺たちは麻雀やったり酒飲んだりしてたんだけど、ある日行ったら、その押入れに何やら怪しげな機械が何台も置かれてるじゃない。

その機械ってのがQ2回線にアクセスを中継させる代物(かかってきた電話を転送?するみたいな事を言ってたな)だったんだけど、その機械代がン百万とか言ってたから「シゲさんも勝負に出たもんだなあ」って仲間内で話してたよ。

その時はまだQ2が世間一般には知れ渡ってない初期段階だったからね、儲かるかどうかは分かんないわけ。

後々、あのわけ分かんない機械が月にン百万も稼ぐようになるんだけど、あの時はそんなこと全然思えなくって、皆で「流石のシゲさんも今回はハズしたなあ」って言ってたもん。

ちなみにブルセラにせよQ2にせよ、ああいうグレーな商売は最初にやり始めた奴だけが甘い汁を吸えるんであってね、世間がザワついてから押っ取り刀で始めてもダメなんだよ。

俺たちみたいな外野が「あーだ、こーだ」と否定的なことをくっちゃべってる段階で素早く行動に移せるタイプでなきゃ成功はつかめない。

そういうところは、やっぱりシゲさんの目利きだよ。

そのうちシゲさんはブルセラの店とは別に古い雑居ビルの3階にもう1つテナントを借りた。

と言っても物販の為じゃあない。10坪ほどの部屋には長机とイスが並べてあって、机の上には電話が何台も置いてあるだけ。

これ、何か分かりますか?

そう、サクラよ、サクラ。

Q2商売ってのは男に長電話させてナンボだからね、かかってきた電話を巧く引き延ばす為の女のサクラを使うってことだよ。

ここら辺のアイデアも今じゃ当たり前だけど、当時はなかなかそこまでやってる業者はいなかったから、やっぱシゲさんは頭が良かったんだろうね。

女はブルセラ商売のツテでいくらでも引っ張って来れた。パンツ売っても1000円、2000円だけど、サクラやりゃ日当1万、2万だからね、そりゃいくらでも(応募して)来るよな。

その様子を横からながめてた俺がつくづく思ったのは「女って裏の顔はエゲツナイな」ってこと。

見た目はどこぞのお嬢様かってのが、カネの為にはパンツやら何やら売って、電話じゃ艶っぽい声を出してるんだから。

1つ部屋の中に女が5人も10人も集まると、女子校みたいな一種独特な空気になってね、女たちに恥じらいとかが無くなっちゃうんだろう。俺たちに学校や(表の)職場でのことなんかを明け透けにくっちゃべるもんだから、女って生き物の裏の顔が見れて面白かったところもあったけど、その半面ゲンナリもしたな。

あんなのが彼氏や旦那の前じゃ貞淑でカワイイ女を演じてるのかと思ったら、なんとも言えない気持ちになったのを覚えてるよ。

そこら辺の面白い話もあるんだけど、それはまた機会があればって事にして、とにかくあの当時のシゲさんは儲かってたね。週末と言わず、毎晩のように仲間や女を連れて飲み歩いてたから。それでもBMWやベンツをホイホイ乗り換えてたんだから、一体どれだけ儲かってたんだろう。

そんなシゲさんも、今はどこで何をしているのやら・・・。ブルセラやQ2が下火になって行くにつれて商売を縮小して最後にはフッといなくなっちゃったけど。

もしかしたら、都会のどこかでJKビジネスでもやってまたブイブイ言わせてるのかも知れない。

あの人はその方面に関しては誰にも負けない嗅覚みたいなもんがあったからな。

できたらもう一度会ってみたい魅力的な男だよ。

じゃ、今回はここら辺で。